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*葬式といえども 我が家では こうなるのダ [中学時代]

ちょうど20年前の今日、祖母が死んだ。
風邪をひいて寝込んで4日目に、自宅で眠ったまま息を引き取ったのだ。
享年78歳。明治40年生まれの女である。

我が一族の冠婚葬祭は、賑やかなのが特徴である。喜怒哀楽が激しいのだ。
泣き喚いていたと思ったら、次の瞬間には大笑いしている。弔事においても例外ではない。
特にこの葬式は、周囲の段取りが悪かった(普段動くのがウチの父と母だったので、
みんなどうしていいかわからなかったらしい)せいもあり、トホホなエピソードが満載である。
その中からいくつか紹介しようと思う。

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『誰だよ消したの』
私の田舎の人は土着の民なので、親戚というのはほとんどが近所に住んでいる。
通夜でもないのだから、打ち合わせが終わったら帰ればいいのに、
全員が我が家に泊まる気まんまんである。
茶の間と、葬儀に使う座敷2間を除くと部屋は3つ。そこに総勢19人。
修学旅行の旅館さながらの情景になった。いやそれよりひどい。
いくら本家とはいえ、全員が寝られるだけの布団もスペースも無い。
もちろん雑魚寝ではあるが、それにもあぶれた私といとこの計4人が茶の間のコタツに横になった。
季節は12月初め。東京よりも緯度が高い土地。もちろんコタツの電源は入れたままである。
それを、誰かが夜中トイレに立ったときにでも、親切にも「あら、風邪ひくよぉ」とOFFにしたのだ。
私は吹雪の中に立ちすくんでいる夢を見ていたが、あまりのサブさに跳ね起きた。
見ると他の3人もガタガタ震えながら眠っていた。
・・・犯人は未だわからない。

『お気の毒』
告別式の間中、家族は最初から最後までずっと正座のまま
弔問客に頭を下げ続けなければならない。
近い親戚の焼香が終わり、いよいよ家族に焼香の番がまわってきた。
私は妹と一緒に進んだが、妹の足の痺れがピークだった。
立って廊下を進む私の後を、妹は四つんばいでヨロヨロついてきた。
焼香のときも、どうにも足がダメで、まっすぐ座っていられない。
「ちょっと、しっかりしなさいよ」と小声で叱るのだが、本人はかなりつらそうである。
後で近所の人から聞いたところによると、
この様子を見ていたウチのことをよく知らない弔問客が
「あらー、この家の子、体が悪いんだねぇ」
「可哀相に・・・、まぁお姉さんが面倒見てるよ」
・・・って、しょうがないから妹をこづいてただけなんですけどっ。

『ホントに風習?』
私の田舎では変わった風習がある。
告別式の最後に、家の建て前の時のように、餅やお金を投げて取り合いをするのである。
葬式なので、高いところからは投げない。
「ほれ! いくぞ! 拾え!」 人々を庭先へ集めて、父が勢い良く景気良くほうり投げる。
あくまで弔事である。弔問に訪れた客がワッと拾えるだろうか。
結局、我が一族だけが飛びつかんばかりに我先に争って拾い、
ひーひー笑いながら袂に入れていく。
その光景を弔問客はうつろに見つめているという構図である。
いくら風習とはいえ・・・なんだかなぁ。

『慣れないお仕事』
祖母はワガママ放題の西太后のような人だった。
最後の最後で、大きなワガママを言った、「焼かれたくないよぅ」。
父は困惑したが母は姑の願いをかなえるべく奔走し、特例として土葬を認めてもらった。
さて、墓堀りをどうすればいいのだろう。棺桶を入れる穴である。なかなか大仕事だ。
棺桶の寸法を知らせ、近所の土建屋に頼んだ。
掘れたというので霊柩車が向かったが、ナント棺桶が入らない。
帰りかけた土建屋に拡張工事を頼み、無事クレーンで搬入(?)。
「いや~、初めての仕事なもんで・・・」 ごもっとも。

『歌ってはくれなかった』
霊柩車が出発し、一族はマイクロバスで墓地へ・・・ってバス来てないじゃない。
なに、この観光バス、こんなときに邪魔よ、どっか別んとこ停めてよって・・・ウチ?
そうです、なんとシャンデリア付きデラックス観光バスが待っていたのです。
子どもたちは大はしゃぎ。
midori も「ソーシキに観光バスぅ? 信じらんねー」と
勢い良く乗り込んだら人にぶつかりそうになった。は?
バスガイドまでいるよ~、おいおい。
ガイドのお姉さんは(運転手もだけど)何も聞かされていなかったようで、
赤くなったり青くなったり、何か喋るわけにもいかず
自分の色鮮やかな黄色い制服を恨むように、うつむいてもじもじするばかりだった。
墓地に着いて我々が降りるとき、「おつかれさまでしたー」と小声で言うので精一杯。

『そして・・・』
祖母の土葬はあくまで特例だった。
埋葬後○日以内に役場に届けるよう言われていたというのに、
父は忙しさにかまけて、すっかり忘れていたらしい。
役場から電話がかかってきた。
「○○さん、死体遺棄で捕まりますよ」

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おばあさん、ブログにこんなこと書いちゃうような孫だけど、化けて出てこないでねぇ。

 

 

 

 

  

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コメント 10

midori

みなさん、ごめんなさいね。
いくらトホホなエピソードでも、葬式ネタではコメントしにくいでしょうか。
年寄りの場合は、ウチのほうでは「お祝い」なので、
我々一族はとっても楽しんだんですヨ。
お気遣いはいりません、気軽にカキコくださいね♪
by midori (2005-11-30 17:08) 

goinkyonosora

不謹慎ながら、笑ってしまいました(^^;
土葬ってまだOK出るんですね~、ビックリ!
by goinkyonosora (2005-11-30 19:48) 

midori

おぺ様 はじめまして。nice!ありがとうございます!
土葬は、特例中の特例です。たしか次の年から全面禁止になったのかな?
あっ今度掘り起こすんですよ、そろそろキレイになったろうって。
でも母が「あの土地は乾燥してるから、ミイラになってるかもよ・・・」って
脅かすんですよね~。楽しみっ♪(コラ)
by midori (2005-11-30 20:01) 

honneno-saiyoukatudounikki

長文お疲れ様です。まだ仕事中でしょうか(笑)。
素朴な疑問ですが、土葬だと、先祖のお墓に入るのではなく、個人のお墓ってことになるんですかねー?
by honneno-saiyoukatudounikki (2005-11-30 22:48) 

midori

ウチータ様 こんばんわ、仕事中ですヨ(笑)。
nice!ありがとうございます。
いえいえ。田舎なので、墓といっても敷地内(ウチは四畳半くらい)に
いくつも墓標があるので、小さい墓標を少し整理してデカイ穴掘りました。
今度それを掘り起こしますから、骨を壷に入れて、
たぶん大きな墓標にしまうんだと思います。
ちなみに・・・母の田舎は今も土葬なんですが、
うっそうとした暗~い林の中でいつも湿っていて(横溝正史の世界)、
歩くと時々、ズボッ!って足がはまっちゃうんですよ~・・・ヒヒヒ
by midori (2005-11-30 23:25) 

綺華

スイマセン・・・私も爆笑だったのですが、不謹慎かな・・・と
コメントを遠慮していました(^_^;)

私も子供の頃、祖父のお葬式に出ましたが、悲しい気持ちより
土地の風習や、親戚が集まる事にテンション上がりまくってましたね。
夜になって、静かになると、急に死んだ人はどこに行くのかと
哲学的(笑)なこと考えてしまって、頭の中に当時習った「何十億年後には
地球もなくなる」と勉強した事が蘇って、急に怖くなって泣き出しました。
それを見た親戚が「おじいちゃんが亡くなって寂しくて泣いている」と
勘違いしていきなり「祖父思いのいい子」になってしまった事があります(^_^;)

お葬式って非日常だから、思いがけない事が起きるもんですね(笑)
by 綺華 (2005-12-01 11:05) 

japan-a-go-go

nice!っていいのか?と悩みましたが非常に勉強になったので。
私は田舎ってものがない為に、風習とか慣習とか全く知りませんでした。
お葬式もシクシク・チ~ンの基本的なものばかりでしたので。。
でも私個人的には自分が死んだら、賑やかにやってもらった方が嬉しいかも。。(あの世?で「まったくうちの子らは・・・」って笑いながら言いたい)
by japan-a-go-go (2005-12-01 17:16) 

mies

お葬式って、その土地によって風習や習慣が全く違うんですね~。
告別式の最後にお餅投げ!実に驚きです!日本って地方によってそれぞれ習慣が違うから、知らない地域の習慣・風習を知ることって興味深いです。
by mies (2005-12-02 16:56) 

midori

みなさん、nice!&コメント、どーもでしっ!
忙しくてくたびれてるから励みになります(涙)。

ayaka様
いえいえ、不謹慎だなんて。笑ってやってください。
当事者が爆笑してるんですから。
でも1コだけ(だけ?)可哀相なことがあったんです。
私のいとこ、祖母が死んだときは高校の修学旅行中だったので
知らせなかったんです、帰ってくるまで。
知らないで帰ってきて、聞いて泣きながら入ってきたんです。
祖母へのお土産の「おばあちゃん」って書いてある湯飲み茶碗持って・・・。
そこで、みんな思い出したように泣きました。

moon様
いいんです、いいんです、くださいnice!(笑)。
ま、人死にに笑うもんじゃないっていいますがね、一般的には。
でもでも考えてみると、弔事って全員集まるじゃないですか、一族郎党。
こーれが楽しかった。結婚式だって呼ばれた人しか集まらないでしょ。
もう何年も会っていなかった親戚にいっぱい会えたので、
なんだかクラス会みたいで盛り上がりましたよ。
本人その場に居たかっただろうなって思いましたもん。
やっぱ生前葬で賑やかにパーティーってのがいいかしら。

mies様
やっぱ驚きですよね~。私も「ホントかよ」って思いました。
(当時は中学生だったので、あんまり近所のお葬式を知らなかった)
目の前で見ると圧巻ですよ。私足がすくんで1コも取れなかった。
バカにされました・・・。
by midori (2005-12-02 23:02) 

midori

Blue様 nice!ありがとうございます。
一度、このドタバタ葬式を披露してみたかったんですよね。
こんな形で、とは思いませんでしたが。
(親とか一族に知れたら怒られるかな 汗)
by midori (2006-03-01 13:17) 

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