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*金髪って もう 普通なの? [家族]

それは10年以上前の年末。
いくつかのお土産を持って帰省した私。
帰る時間を告げると、それでなくても忙しいのに
電車の時間に合わせて車を待機してくれるのが申し訳なくて
「適当に帰るから迎えに来なくていいよ」と電話を入れ、
駅からタクシーで実家へ向かった。

私の実家は古い日本家屋である。もちろんすべて和の造り。
引き戸の玄関を開け、たたきに靴を脱ぎ、玄関に上がり、
茶の間へ続く障子を開けた。

???
茶の間のコタツに、金髪の外人が二人寝ている。
えっ? 聞いてないぞホームステイなんて。
(その頃、親類の間でホームステイが流行っていて、お盆に留学生の中国人に
会ったばかりだったから、ウチでも受け入れたのかと思ったのだ)
暗いので電気を点けてみた。パッ

・・・んげっ! 弟かよ!
ってことは もう一人は・・・・・・かあちゃん!!!

「何なの、その頭?!」
昼寝から目覚める母と弟。
二人の髪は見事にホワホワの金髪だった。
当時はバブルが終わって何年か後。
茶髪だって今みたいに一般的ではなかった、
ましてや金髪なんて、宝塚か ヤンキーか 青江三奈・・・。

「あ、これ? 似合う?」
「似合うじゃないでしょ、アンタ高校生じゃない!」
そう、弟は当時 高校3年生。
主将を務めた野球部を夏に引退し、秋には就職も決まり、
髪を伸ばして、冬休みの間だけ染めてみたというのだ。

「お母さん、こんなの許していいの?」
「だってお母さんがやってくれたんだぜ」
「はぁ?」

――冬休み第1日目に、家の洗面所で、パオ○ だか ビゲ○ だかの液を、
親に隠れて坊主の伸びた頭に塗ろうとしていたところを、弟は母に見つかる。
「何やってんの!」
「あ、いや、これは・・・」動揺する弟。
すかさず箱を取る母。
「なんだよ」箱を取り返そうとする弟。
「で、何色?」箱をしげしげと見る母。
「なんでもねーよ」再び箱を取り返そうとする弟。
「何色だっつーの」箱を離さない母。
「金・・・いや、茶かな?・・・返せよ!」
「ふーん、どれ、お母さんが塗ってやる」
「へっ」
・・・作業中・・・
「よし、できた」――
という出来事があったというのである。

「なんでお母さんまで金髪なのよ」
母は出て行こうとする。
「ちょっと待った」
「いやー、手で塗ってあげてたから、手に付いた液がもったいないもんで、
チョイ、チョイ、チョイと。。。」
「はぁ?」
「ほんのちょっとだよ、毛先だけ。そしたらァ、こんなにキレイに染まっちゃって・・・ねぇ」
なにが、ねぇ だ。

よく聞くと、話はそれだけではなかった。

弟の金髪は許すつもりだったらしい母。
というのも、坊主頭が伸びてこれからおしゃれしたい年頃。
でも春からは就職が決まっているので、自由にできるのは冬休みと春休みの間だけ。
3学期が始まるときに黒く戻すのであればよしとしよう、と思ったという。
まぁ、それはそれでわからないでもない。(金髪に染める、というセンスは別として)

しかし問題は母だ。母が怯える相手はただ一人。父である。
父は、自分のハチャメチャなエピソードを呼ぶ性質とは逆に、
性格的には常識を重んじる人間である。
自分にも厳しいし、人にも厳しく「それらしく」を望もうとする。
特に、母は父の一番身近な存在として、女として妻として母として「らしさ」を強要されていた。
その母が。3人の子持ち、専業主婦、一族の家長の嫁である49歳の女が。
「金髪」。
こーれは、誰が考えてもマズイと思うでしょう。

母は金髪になったその日から帽子をかぶり始めた。父が家に居るときだけ。
家の中でもかぶっていたから だいぶ不審なものだが、
神経質な父なのに その不審さに気づかない。
そのまま5日ほど経った。
父が朝会社に出かけた後、やれやれと帽子を取り、内職仕事の和裁を始めた母。
しばらくして、突然背中に気配を感じるが、振り返るまもなく声が上から降ってきた。
「なんだ、おまえ、その頭は!」
父が珍しく忘れ物をして、取りに戻ったのだった。父は・・・怒らなかったらしい。なんで?

それが、私の帰った前日の出来事。
「おまえも染める? まだ液あったよね」
「かんべんしてよぉー!」

――この話には後日談がある。

冬休みが終わり、髪を黒く戻した弟は、この顛末をクラスで喋ったらしい。
ある日、弟の友人数人が、弟の制止を振り切って家に乱入してきたという。
「金髪かーちゃん、見に来てやったぜー!」

おい弟! 友達選べ!!

 

 

 

 

  

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コメント 7

honneno-saiyoukatudounikki

全然ネタと関係ありませんが、ウチの両親も今思うとかなり変わっている部類に入るのでは・・・と思います。今だから、時効かな。パソコンなんか持っている訳ないウチの親だし。

実は、両親の初体験(もちろん、アッチね)の話をまったく別々に聞いたことがあります。しかも相手は両者とも別人でした。そういうことって覚えているもんなんですね~。

>midoriさん、下品なら削除してくださいね(笑)。
by honneno-saiyoukatudounikki (2006-01-01 17:45) 

midori

ウチータ様 nice!アンド衝撃の告白ありがとうございました。
お父さまのならわからないでもないです男同士ということで。
なんでお母さまがそういう告白を? もう一度確認しますがウチータさん
息子さんですよね(笑)。 うーん想像がつかないなぁ・・・
by midori (2006-01-01 17:58) 

midori

ramu様 ようこそ。nice!ありがとうございます。
ブログお邪魔させていただきました。日本恋しくなりません?
by midori (2006-01-02 18:49) 

goinkyonosora

あけましておめでとうございます。
ファンキーなご家族で、楽しいですね(^^;
今年もよろしくお願いいたします。
by goinkyonosora (2006-01-03 17:03) 

midori

おぺ様 新年早々のnice!ありがとうございます!
こちろこそよろしくお願い申し上げます。
ウチはいたって常識的な家族と思っていましたが、
ブログを始めて、こんなにネタに困らない家族って・・・
と見方がちょっと変わりました(笑)。
by midori (2006-01-04 11:13) 

綺華

遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いいたします。

お正月のお笑い番組でもめったに爆笑しない私が、こちらに来ると
必ずパソコンのモニターを1度拭くぐらい吹き出します(笑)
あ~いい家族だ・・・笑いの絶えないエピソード満載の家庭に生まれたかった。
by 綺華 (2006-01-08 18:33) 

midori

ayaka様 のっけからnice!ありがとーございまーす。 
こちらこそ、今年もよろしくお願い致します。
うわーそーすかー、パソコンくん良かったね、
私がブログ更新するたびに拭いてもらって(笑)。
もう、バカ家族ですよ、ホントに。
私の家族に一人でも会った方には、「納得」できるエピソードらしいですわ。
by midori (2006-01-08 19:18) 

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