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*性同一性・・・拒否の時代 [専門学校・バイト時代]

よくあることだと思うんですが、
midori は男に生まれたかったと願っていました。
おしとやかにしなくていいし、きれいにしてなくていいし、危ない遊びもできるし、・・・。
実家は一族の本家で、昔から親戚がよく集まる家でしたから、
台所で立ち働くのはいつも女で、男は酒を飲みながらただおしゃべりしているのを見ていて
女って損だな、と思っていました。

中学生あたりからますますその傾向は強まって、
男まさりの自分を演出したりしていました。
祖母からは「女なんか嫁に行けばいいんだから」と口癖のように言われていたので
反発する気持ちも強くありました。
家の中の人間関係も難しいものがあって、ひどい嫁いびりをされる母を見ていて、
「この人は何も出来ないから、いびられる嫁の地位にしがみつくしかない。くだらない。
私は男と肩を並べて仕事をバリバリして自立して、一人で生きていくんだ」
と思っていました。

服装もどんどん男らしくなっていきました。
女子ってグループを作って、どこへ行くにも、トイレまで一緒じゃないですか。
そういうのが嫌で、どちらかといえば男子と仲良くしてました。
「男好き」と陰口を叩かれるくらい。なんでやねん。

高校生のときは、母を手伝ってスーパーで買い物などしていると、
母の友人に「あら、いい息子さんねー、うちのなんか一緒に歩いてもくれないわよ」
と声をかけられて母が苦笑いなんてこともしょっちゅう。

女子高ではなかったのですが、バレンタインデーの時もチョコレートをもらい、
卒業のときには、音楽の先生(女性)に告白されたりもしました。
自分では、女が好きなわけではなかったので、胸中は複雑なものがありましたが。

東京に出てきて最初に住んだアパートは、ねらったわけではないのですが
場所や家賃や諸々の都合で、男子禁制のところ。
(自分の部屋だけでなく、アパートの建物自体、許可が無いと出入りできない造り)
引越しの荷物を運び込もうと、隣に住んでいる大家さんに挨拶に行ったら、
「うちは男の人は入れないのよ! 帰ってちょうだい!!」と怒鳴られました。
必死に食い下がって事情を話して、やっと
「あら~ごめんなさいね、あたしてっきり」
とお許しをもらい、入居しました。なんだか前途多難・・・。

そして、こんなエピソードが生まれました。(前ふり長いってば)

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卒業式の翌日に、さっさと東京に出てきてしまった。

親からの仕送りは微々たるもんなので、早速バイトを、と思うのだが、これがなかなか決まらない。
その頃火曜日だけの発売だった「フロム・エー」だが、
やっと朝9時頃に駅のkioskまで行って買ってきて、3日間くらいかけて吟味して、
ようやく木曜日くらいに応募の電話をかけていた。
もちろん、どこでも「もう決まっちゃったよ」と言われる。
最初は何故かわからなくて、
「よっぽど人気のあったバイトなんだなぁ」くらいに考えていたから決まるはずもない。

親に電話するたびに(その頃は、学校もまだ始まらないし淋しくて、
しょっちゅう公衆電話からかけていたのだ、可愛いもんだ)
「なにしてけつかる、はよ働け」と言われ、本気で涙ぐんでいた。
だって自分では一生懸命応募してるのに会ってもくれないのだ。
東京ってチビしいとこだと思った。

そのうち学校も始まって、最初に出来た某地方都市出身の友達に相談したら
「そら、スタートダッシュが遅いべさ」と説かれ、膝を打つこと3回。
なんだ、そーいうことか! と次の火曜日には朝5時に起きて駅へダッシュ! 

kioskが開くまで柱にもたれて待っていたら、ぽんぽんと肩を叩くやつがいる。
ふりむけば、土方な中尾彬がにんまり。
「な、なんですか?」
「あんちゃん、いくらのがいいんだ?」
「は?」
「7000円、8000円、今日は9000円のも残ってるぞ」
「え?」
駅の外をみると、トラックの荷台におじちゃん達が5人ほど乗って煙草をふかしている。

頭の中でやっと神経がつながった。

「あ、あの、いいです」
「んあ? もっと髙ぇとこの待ってんのか?」
「いえ、あの、体力が・・・な、ないもんで・・・あの・・・事務系の仕事のほうっが・・・」
「んだよ、まぎらーしーとこで立ってんじゃねーや、このガキっ」
こ、怖かった・・・。でも日給9000円かぁ、いいなぁ・・・男ならやるんだけど・・・。

それからほどなくバイト先も見つかり(時給650円也)、1ヵ月ほど勤めて、
学校と仕事の両立のリズムにやっと慣れてきた頃-。

バイト先は繁華街にあったので、夜はネオンビガビガでとても明るい。
その日は早めに仕事が済んだので、バイト先の先輩と話しながら駅に向かって歩いていた。
突然「10円貸してェ!」という声を頭上から浴びた。え・・・何、こいつ!
「ねぇ、聞こえないの、10円貸してよォ!」
ぽかんとしてしまった。口あんぐりで、体も頭も動かない。

人生で初めて出会ったオカマさんである。しかもキタナイ。しかも二人。
「はいはい、10円ね!」と見かねた先輩がオカマにいくらか渡している。
「ねェ、公衆電話はぁー?」わぁっ、顔近づけんなっ!
「あっち、あっち!」先輩が引き離してくれた。
「ありがとぉ。いつか返すわねぇ~!」オカマは走って行った。
「いらない、あげる、あげる!・・・midori ちゃん大丈夫?!」
オカマがいなくなったことに安堵し、しゃがみ込んでしまったのだ。

気をとりなおしてまた歩き始めたら、先輩が面白そうに言う。
「あれは絶対midori ちゃんをナンパしようとしてたね」
「え、えぇ~っ!! なんでそんなこと言うンすか-」
「だってなんか声かけてみたかったんじゃないの、カワイイって」
「やめてくらさいよー。まったく冗談じゃない」
「うふふふー」

・・・こんな格好じゃヤバイかなぁと初めて考えた夜だった。

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いまは、どっから見てもオバサンです。
でも一人で生きてます・・・(泣)。

 

 

 

 

  

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コメント 4

響(きょう)

はじめまして。
文章、真剣に読んでしまいました。面白かった。
人生、というか、人の物語っていろいろで面白いですね。
by 響(きょう) (2005-11-10 16:36) 

midori

いらっしゃいませ。コメント&nice! ありがとうございます。
「つくってない?!」と突っ込まれる人生ですが、えぇこんな人生ですとも
(読みやすいようにはしてますが)。
よろしければまたおいでください。
by midori (2005-11-10 17:03) 

blues

こんにちは。
midoriさん、いろんな経験されていますね。
でも、そういうの好きです。
それに、ひとりで生きる時間も素敵なもんですよ(何故か偉そう)。
またおじゃまします。
by blues (2005-12-07 11:52) 

midori

blues様 おはようございます。
なぜかトホホなエピソードを呼ぶ体質のようで。。。
楽しんでいただければ嬉しいです。

ひとり暮らしも長いので、もう今さら誰かと暮らすなんて
どだい無理な話かも、と思ったりもしています。
by midori (2005-12-08 10:10) 

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