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*春に大雪がやってきた! 後編 [家族]

(前編の つづき)

やっと電話ができた母との会話で判明したのだが、
なんと妹(中学1年)もこの街に買い物に出て行ったまま連絡が無いというのである。
「T(midori の妹)、見なかった?」
「えっ! 来てるの? 知らないよー」
「でもとにかく、あれらも駅に向かうしかないだろうから、行くよ」
「うん、お願いします」

手足が冷えきってしまって私でも泣きたくなるくらい つらいのだが、
10歳の弟がなんとか頑張っているので愚痴も言えない。
「あったかいコーヒーないの?」
「ないよ」
「お母さんは来るの?」
「来るよ、今お父さんと車で向かってるよ」
互いに手に白い息を吹きかけ、背中をさすり合いながら、そんなことを喋っていたら、
おもむろに肩を叩かれた。

「? T!」
妹だった。二人の友人と一緒だ。
「midori 、家に電話した?」 (←我がきょうだいは、名前で呼び合うのだ)
「した。迎えに来るよ」
「お父さんが? 良かったー」
「あの人たちは?」
「○○ちゃん家は、電話してもいなかったんだって。
○子ん家は、バスで帰って来いって言われたって」
「バスなんか乗れないだろ」
「そーなんだよねー、でもウチで来るならいいじゃん」
「みんな乗れるかなぁ・・・」
我が家の車は、5人乗り。
父、母、私、弟、妹、妹の友人二人・・・7人かぁ大丈夫かよ。

我々は待った。6時を回った。
どんどん車が迎えに来て、駅の中が空いてくる。

我々は待った。7時になった。
おなかが空いているが、KIOSKは閉店し、駅前の商店街も
シャッターを下ろしている。我慢するしかない。

我々は待った。もう8時になる。
駅に到着してから すでに5時間が経過した。
電話を切ってからは4時間。
家からこの駅まで、たかだか20kmくらいの距離なのに、
車で4時間以上もかかるなんて・・・。

「あっ! お母さん!」突然、弟が走り出した。
見ると、駅の入り口で、母が泣きそうな顔をして我々を探している。
飛びつく弟を受け止め、我々を見つけると、安堵の表情。
「寒かったろ~早く乗りなさい! えっみんなは家どこなの? うん、うん、いいよ送って行くから」
我々を車へ誘導する母が、もう一人見つけた。
隣の家の娘である。

「アラ○○ちゃんじゃないの!」
「おばちゃん!」
「誰か迎えに来るの?」
「・・・お父さんが仕事でいなくて。
バスかタクシーで帰って来いって言うんだけど、全然乗れなくて・・・」
この家も我が家と同じく、お父さんしか車を運転できない。
「乗ってきなさい」
「えっでも、もう乗れないんじゃ・・・」
「大丈夫だからー」

かくして5人乗りの普通乗用車に、
前の席に3人、後ろの席に5人の 合計8人が乗り込んだのであった。
くっ苦しい・・・。
母は、おにぎりや缶コーヒーなどを用意してくれていた。
車内はエアコンで暖かく、空腹も満たされ、帰れるという安心感で、
みんなやっと落ち着いた。乗り心地は最悪だったが。

相変わらず道路は大渋滞で、車はじりじりとしか動かない。
「お父さん、やっぱり国道はダメだわ、山道行こーよ」
「山道ももう混んでるよ、ガードレールあるとこのがいい。
おめえ、こんなに人乗せてよー、川さ落ちたらどーすんだ」
市内一帯が大停電中で、町中に、灯りといえば車のライトだけなのである。

妹の友人を家まで送り届け、やっと我が家に着いたときには、
0時をまわっていた。やはり4時間かかったのだ。
車の中でずっと身動きがとれずにいたので、尻が痺れて感覚が無い。

しかし、それからも大変だったのである。

父は我々を降ろすと、着替えもそこそこに、
あの大渋滞の中に戻って行った。
遅れても、夜勤を休まないのだった。寝てないのに・・・。
お父さん、ごめんなさい、ありがとう (;_;)

そして我々は・・・。

停電のため、水も出ない家で一夜を過ごすのである。
どういう事態かというと・・・
まずは真っ暗闇。
暖房器具のスイッチが入らないから寒いまま。
水が出ないのでお風呂も入れない。

結果。
ガスコンロで手をかざして温め、
冷凍庫の氷を鍋に入れて沸騰させ
タオルで絞り顔と足を拭いて
冷たい布団に直行。
あとは寝るしかない。

そうやって無理やり眠った翌朝。
腹立つくらい いい天気だったなー・・・。  (完)

----------

その日のことがトラウマになってしまったのか、
弟はそれからしばらくは、出かけるときになると必ず
「今日は雪降らないよね?」
と家族に訊いたものである。
降らないよ、と返すと安心したように笑って出かけていく。
それは夏でも変わらなかった。何年か続いた。

いま雪の被害に悩む地方に住んでいる子どもたちも、
雪や冬というものがトラウマとなってしまうのだろうか。

 

 

 

 

  

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honneno-saiyoukatudounikki

温かい家族愛、郷土愛を堪能しましたが、私は、
>「アタタタ・・・」と言いながら、私に攻撃を加えてくる(痛いってばー)。
この部分にナイスです。
そういえば、すぐに感化されるよねー、子供って。
by honneno-saiyoukatudounikki (2006-01-08 02:25) 

思わず、読みきってしまったお話でした。
家族の一体感が感じられるエピソードですね。
by (2006-01-08 05:28) 

midori

ウチータ様 nice!ありがとうございまーす。
弟の被害によく遭っているmidori です。
ジャッキー・チ○ンの映画の後は、○○拳法が待ち構えてました・・・。

みちあき様 nice!ありがとうございますー。
私、ウチの家族ってケンカばっかりで最悪だと思っていましたが、
ブログを始めて、こうして思い出しながら書いてみると、
客観的に「イイ感じ」の話が多くて我ながらビックリしています。
親の愛情をこの歳になって確認することがあるなんて、
思いもしませんでした。ちと反省。
by midori (2006-01-08 09:38) 

綺華

いいご両親ですね・・・状況はものすごいけど、お話しはほのぼのしました。
ケンカするほど仲がいいというのは本当なんですね。
うちの両親は喧嘩した事がなく、ケンカしたのを初めて見た時は
別れる事が決まった時でした。
イラストも場景を見てきたかのように必死さが伝わってきてどちらもniceです。
by 綺華 (2006-01-08 18:40) 

midori

ayaka様 本日2コ目のnice!ありがとさんどすー。

ウチの両親は、イチャついて くすぐり合いをしているうちに
グーが入ってしまったりして「てめっ痛ぇじゃねーか!」みたいなことで
大喧嘩になったりするような夫婦です。(犬っころと同なじですよ)
我がきょうだいは、「また始まったよー」と呆れて見ている状況でした。

この大雪のときは、本当に「親ってありがたいな」と思いましたよ。
親の他に誰がこんなことしてくれますか、ayakaさん、ねっ ( ^ー゚)b

イラストは、ブログ読者のロッキーさんです。
彼、喜びますよ、ありがとうございます。
by midori (2006-01-08 19:29) 

香織

 いい日記だったー。
 じーんとしちゃいました。
 素敵ですねぇ
 nice!ボタンどうやっていいのかわかならいです。
 ソーネットじゃないと出来ないのかな。

 うちもリンク貼らせていただきます。
 どうやって貼るのが一番良いか今検討中ですから
 ちょっとまってくださいね。

 ええ まだこのブログでどなたともリンクしてないのもので www
by 香織 (2006-01-08 20:38) 

midori

香織 様 コメントありがとうございます。
すみません、so-netユーザーでないと、niceは無理なんですね。
お気持ちだけ有難く頂いておきますです。
まぁリンクまで。。。ありがとうございます。

この記事を書き出す前は、「大変だったんだよなぁーあんときゃよー」
くらいに考えていたのですが、書いて、まとめて、投稿したときに
「おっちょっとイイ話になってんじゃねーかこのやろー」と思い、
みなさんにコメントを頂くにつれ、親への有難みが湧いてきたことに
自分でビックリしています。どうもありがとう。
by midori (2006-01-08 21:00) 

goinkyonosora

イラストもエピソードもステキで温かですね(^^)
さっきより少しはソネットがマシになったので、再登場です(^^;
by goinkyonosora (2006-01-09 21:36) 

midori

おぺ様 nice!ありがとーございましたー。
正直、書くまでは こんな「ええ話」になるとは思いませんでしたよ。
親には感謝せねばなりまへん。
by midori (2006-01-10 12:56) 

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