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高校入試も ドタバタなのだ [高校時代]

その高校を志望したのは、
・新設したばかりで、中学の先輩が1人しか入学していないこと
・修学旅行がないこと
・制服がセーラー服じゃないこと
これが理由だった。
親にも担任にも友人にも一言も相談せず、一人で決めた。

入試の朝、前日の みぞれ混じりの雨が止み、良い天気になった。
受験生は最寄り駅に集合し、先生の引率で、集団で高校へ向かうのだ。

生徒が続々と集まってきた。
自然に高校ごとのグループができる。
え? あんたも? あれ? おまえも?
・・・なんだよ、結局、同なじ高校20人も受けんじゃねーか、
高校に入ったら、自分を知らない人たちの中で、
新しい自分に生まれ変わろう! と思っていたのにぃ。。。

引率は、新婚ホヤホヤの音楽の先生。
浮き足立っている様子に、イヤーな予感がしたが、
それは当たっていた。
ついこの間までハネムーンに行っていた先生は、
高校の下見をしていなかったのだ。つまり、高校の場所を知らないということ。
「なんとかなるわよ」
えぇ~~~。20人全員が不安な面持ち。

駅に着く。
他の中学の生徒についていけばいいや、と思っていたのだが、
我々はかなり早い時間に集合していたので、そういう御仁を見かけない。
どーすんの?

「電車から見える学校だよね」
「この駅と次の駅の間にあったよな」
「じゃ、方角的に こっちじゃん」
先生をあてにできないので、我々だけで相談して歩き出す。
「え~こっちなのぉ?」
先生は後をついてくるだけ。あんた何しに来たん?

予想する方角に歩いているうちに、道路が途切れた。
前方に見えるのは、切り崩した山。現在、丘。
宅地の造成中らしい。
「うそっ」
「ここ、登ンの?」
「まじでー」
「他、道、あるだろー」
「でも、そっち行って、結局着けなかったらどーすんだよ」
「登ったら、確実だよなー」
「・・・しょーがないか」
早めの時間に出てきたとはいうものの、
もしも道に迷って遅刻したら取り返しのつかないことになる。
我々は、黙って登り始めた。
「えーココ行くのぉー? 先生ハイヒールなのよぉー?」
背後で聞こえる声には全員で「無視」。

前日の雨のせいで、足元はぬかるみである。
我々は、全員、中学校の校則どおりの真っ白なスニーカー「ジャガー∑」。
「ゼッタイ滑るなよ」
「縁起でもない」
「うえー泥だらけー」
我々は、2、3人で つかまりあいながら、
女子はキャーキャー叫びながら、せっせと造成中の丘を登った。

「ほんとに こっちの方向でいーんだろうな」
「他の学校のやつら、どこ通って向かってんだろ」
「あーんっ、先生スカート汚れちゃったぁ」
「・・・(無視)・・・」

丘のてっぺんまで登らないうちに、前方に高校が見えてきた。
「あれだー!」
「あっほんとだ」
登っていくと、建物の全景や広い校庭が見え・・・
「やっぱこっちでよかったんだ・・・あれ?」
斜め下を見ると、
他の中学の生徒が、造成地を囲む形の舗装道路を歩いているではないか!

「あんな道あったんじゃん!」
「なんだよ、あそこで曲がんなきゃよかったのか!」
「えええええー、みんな靴キレイじゃん!」
ぶーたらぶーたら文句が飛び出したが、
登った以上は降りなければならない。
ぬかるみを降りるのは、登るよりもっと大変だった。
滑って転ぶことは死んでも避けなければ。
細心の注意を払い、自然にみんな無口になるなか、
先生だけがワーキャーうるさいっ。

なんとか一人も滑り転ぶことなく、無事下り終えて、
道路にドロドロの足跡を残しながら我々は高校へ向かった。
校門は開いているが、まだ早い時間なので校舎には入れない。

他の中学の受験生が集まってきており、
みんな難しい顔で単語帳やノートなど開いているなか、
我々はまっすぐ水道場へ行き、靴を洗い始めた。
ドロ道なんぞを登ってきたため、それまでの緊張感や気負いが取れ、
無事たどり着いた安堵感から、笑い声さえ飛び出すほどであった。

結局、試験直前に何の勉強もできぬまま、我々は試験に臨んだのだったが、
全員、無事 合格。
その日のトホホな顛末は、笑い話になった。めでたしめでたし。

 

 

 

 

  

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コメント 14

goinkyonosora

私の時は引率などなく、勝手に行きました。
残念ながら?とてもわかりやすい場所にあって、笑えるエピソードも生まれませんでした(^^;
全員合格してよかったよね(^^)
でも、物凄く時間の余裕をみていたんだね。。。
by goinkyonosora (2006-02-24 09:51) 

midori

おぺ様 早速のnice!ありがとうございます。
考えてみれば、引率なんてしてんのウチの中学だけだったかも。
でも、あんな引率ならいらんとです。ヒロシです。

はい。考えらんないくらい早く家を出ました。
だって・・・ウチのほうは・・・朝でも電車1時間に1本なんだもん。。。
(特に上り方面)
by midori (2006-02-24 10:27) 

pingpong

試験前だというのに、ちょっとしたハイキングでしたね。
そのおかげで、緊張がぶっ飛んだのかもしれませんね。
笑い話にできてよかったです。
by pingpong (2006-02-24 11:35) 

綺華

昔過ぎて、記憶があいまいなんだけど、私も確か友達と数人で
勝手に受験しに行ったと思います。
ただ、大雪の日で、「滑らないように、滑らないように」と祈るように
歩いていたことだけは確かです(笑)

うちも学校が出来て5年目の新しい高校に行ったので、まわりは
畑と造成地・・・なんか昔を思い出しました。
by 綺華 (2006-02-24 12:33) 

Blue

先生って・・・・。
新婚だからって・・・・。
許されるのかッ!!!!!
下見ぐらい行っとけっちゅうねん。

高校デビュー私も憧れたなぁ☆
by Blue (2006-02-24 13:32) 

むしろ、その先生に愛おしささえ・・・
あ、新婚か。。
by (2006-02-24 18:56) 

さいがわ

私は、大学受験の前の日、下見に行って道に迷いました。
結局わからずに帰ってきたのですが、次の日には何故だか人の列について行ったら自然につきました。
案ずるより産むが易しですね。
by さいがわ (2006-02-24 22:44) 

honneno-saiyoukatudounikki

記憶力いいねー。そういや大学入試の日、筆記用具を忘れたことに気づいて、あわてたっけなー。
by honneno-saiyoukatudounikki (2006-02-25 14:54) 

midori

pingpong様 nice!ありがとうございます。
そーそー、ハイキングでした、泥まみれの(笑)。
合格したから こうやって話せるんですけどね。

ayaka様 nice!ありがとうございます。
私は6回生でした! その造成地は、今は立派な住宅地になってます。

mone様 はじめまして。nice!ありがとうございます。

Blue様 はじめまして。コメントありがとうございます。
そーなんですよ、ねらってたんですけどね、高校デビュー(爆)。

MINIPOLO様 nice!ありがとうございます。
んもー男子は「いやぁん」とか言う女子にヨワいんだから~。

いいだや様 nice!ありがとうございます。
私も前日、父の車で見に行ったんですけどねぇ。
夜だったし雨だったし車だったしで、もぅ全然。。。
(でも、それまで他の学校と間違ってました 爆)

ウチータ様 nice!ありがとうございます。
記憶力はいいほうです。でも「思い出」ばかりで、
暗記物とかは全然入りません(あかんやろ)。
え゛っ。で、筆記用具なくてどうしたんですか?
by midori (2006-02-26 14:12) 

小坊主つばめ

ワラエテヨカッタ(゜Д゜;)=3
by 小坊主つばめ (2006-02-27 00:18) 

midori

小坊主つばめ様 nice!ありがとうございます。
ホントですよぉー。ドキがムネムネしました(なんのこっちゃ)。
by midori (2006-02-27 08:32) 

midori

shino様 nice!ありがとうございます。
お元気? 新居はどないですか?
by midori (2006-03-01 13:10) 

midori

naoto様 またあった! nice!ありがとうございます。
なんか、今頃気づいてすみませーん。どもども。
by midori (2006-03-11 20:26) 

midori

みちあき様 nice!ありがとうございました。
あれっ、いつ・・・?(ちょっと不便になりましたね)
by midori (2006-03-17 20:06) 

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