*若者の命は恥より軽い・・・

いま通勤に使っている地下鉄Ｍ線は、ホーム全体に塀がある
(利用しない人には わかりにくいかなー、線路に降りられないようになっているんです。
電車の乗り降りの際はドアの部分だけが開く仕組み)ので、
人身事故で電車が止まるなんてことはありませんが、
以前はよく遭遇しました。

「ひっ人を轢いてしまいましたァ・・・！」
動揺してつい衝撃的なアナウンスをしてしまった運転手の、
まだ若そうな感じの声に同情したり、

「えー、左腕がまだ見つかっておりませんのでー、（この時点で車内かなり動揺）
見つかり次第、運転開始いたしますー、
え発車まで　えこのまま　えお待ちくださいー」
と放送する、あまりにドライな駅員の鼻声に困惑させられたり・・・。

そして、自分も事故の餌食にされそうになったことがあるのです。

－－－－－－－－－－

それは東京に出てきて間もない頃。
バイト先の最寄の駅。
お使いを頼まれて、山手線に乗るため、ホームへの階段を昇っていた。
すでに電車は到着していて、今にも発車してしまいそうな雰囲気だった。
「東京はすぐ電車来るしな、いいや次ので」
と見送ることにし、階段をゆっくり昇った。

ホームに上がってもまだ電車は停車している。
「乗れるか？」と思い一歩足をドア付近にかけたその時、
プッシュー
という音とともにドアが閉まった。

デッキシューズを履いていた左足は、
ドアの閉まる力で横向きに回転して挟まり、
すぐ開くかと思ったら、そのままゆっくり右方向に進み始めた。

え？　ちょっと待ってよ、挟まってるってば。

口の中の呟きを無視したまま、少しずつ電車は動いていく。
私の体はホームにある。
左足は電車にあり、右足でホームを歩く格好になった。

電車は加速してゆく。
え？　え？　え？
ホームを蹴る右足の動きが早くなる。

私、どうなっちゃうの？
凝視していた足元から、視線を進行方向に移した。

黒と黄色のストライプの柵がホームの端を横切っている。
このままでは、柵にぶつかって跳ね返り、私の体は線路に堕ちるだろう。
そして電車に捲かれて死ぬ・・・。

そうしている間にも、どんどん電車はスピードを増してゆく。
ガラス越しに車内を見た。
乗客が不思議そうに私を見ている。挟まっていることがわからないのだ。

柵が近づいている。
右足がスピードについていけなくなりそうだ。
柵がどんどん大きくなる。
右足は・・・もう・・・・・・

ぶつかる！！！

と思った瞬間、左足がすっと抜けた。
もんどりうってホームに倒れ、私の体は柵の前まで転がって止まった。

助かった！　

・・・とは思わなかった。
体の底から湧き上がってくる　「恥ずかしい～！！！」　という激しい感情に、
ガバッと起き上がり、人々の驚いた視線を避けて
ものすごい勢いでホームを駆け抜け、２段抜かしで階段を駆け下り、
バタバタバタ・・・とトイレに駆け込んだ。
個室に入って、「あー恥ずかしかった・・・」と落ち着くまでこもっていた。

－－－－－－－－－－

あのとき足が抜けなかったら・・・今年は１７回忌の法要になったはず。
くわばら、くわばら。
今のmidori なら、ぜんっぜん恥ずかしくありません。
すぐさま駅長室に怒鳴り込みます。おぼえてろ、Ｉ 駅め。
時は流れたのね～。

 

 

 

 

 　

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コメント 10

こんばんわ！ナイス！と思いきや、ど～も不謹慎な気がして押せません
でした（笑）
それにしてもmidoriさん、ガッツありますね。
私だったらきっと泣いてる。。。
まじで読んだだけで怖かったっす。ホントご無事で良かったっす。。
あ、毛の話題、もう一つあったんで良かったら覗きにきてください。（笑）
by japan-a-go-go (2005-11-16 21:32) 

ホント～？（大笑）
思わず光景が目に浮かびました。それもアニメです、なぜか。
今だから話せるネタなんでしょうか。私は遠慮なくナイスです！
by honneno-saiyoukatudounikki (2005-11-17 01:26) 

moon様　
いや～命拾いってのは、こういうことでしょうか。
ああいう時って、ちょっとの時間なんでしょうけど、本当に情景が
ゆっくりゆっくり進むんですよね。だからいろいろ考える時間があります。
不思議なもんです。
正直言って、あそこでスッと抜けるとは思いませんでした。

ウチータ様　nice！ありがとうございますー。
ハハハ、笑ってやってください。
この話は、ストックしていていつ出そうかと思っていたのですが、
最近、韓国で、ベビーカーが挟まったまま発車し、
お母さんは赤ちゃんを抱き上げ助けたものの、自分の服が
ベビーカーに引っかかったまま引きずられた・・・
という事故がありましたね。
そのニュースを観て、あ今だと思ったのです。
by midori (2005-11-17 10:04) 

すご～い体験でしたね！でも無事で良かった！
きっと強運に恵まれていますよ！！
今古いことを思い出しました。私もバッグをドアに挟まれてしまったことがありました。そのうちにドアが開くだろうと思っていたら、５，６駅過ぎでもこちらのドアが開かなくて、時間は迫るしあせりました。仕方なく思いっきりひっぱったら、抜けたんです！バッグはひどいことになりましたけど・・
by あゆ (2005-11-18 01:02) 

あゆ様　nice！ありがとうございまーす。
いや～結構死にはぐってるんです、私。
都会の電車は危ないですよ。
私の田舎だったら、おばあちゃんが階段昇って降りて乗車して
座席にそろそろ座ったかな？　あたりでやっと発車ですもん。
でも一時間に１本しかないですけどね。
by midori (2005-11-18 12:32) 

こんにちは、昨日は私のブログにご訪問ありがとうございました。
いくつか記事を読ませていただきましたが、面白いですね～。
また時どき来て読ませていただきます。
個人的には卒業時に先生に告白された記事・・・・大笑いしてしまいました。
だって、読めど読めど「オトコの先生」が出てこないばかりか
最後の告白シーンは、予想していたけどあまりにドラマチックで（笑）

地下鉄Ｍ線、安全でいいですよね。
やっぱりそういう事が続いて、塀が出来たのでしょうか？
by 綺華 (2005-11-18 12:47) 

ayaka様　nice！ありがとうございますー。
ははは、笑ってやってください、長文で恐縮ですが。
周囲からは「歩くエピソード王」と呼ばれるくらい
トホホな体験には事欠かないもんで、
これからも小出しにお送りいたします。ぜひご贔屓に。

Ｍ線(メトロＮ線もそうですよね)は安全でいいんですが、
かなりコストがかかるようで(なんせ路線の全駅ですから)
普及はなかなか難しそうです。でもホント危険ですから
「かーけこみ乗車にっご注意くださひー」は守るべきですね。
by midori (2005-11-19 11:11) 

すご～い！
かなりギリギリな体験ですね・・・。
ほんと、無事でよかったですね！
足が抜けたあとの恥ずかしさが非常によ～くわかります。とにかくその場から去りたいですよね！
by mo-to (2005-11-20 01:17) 

桃様　nice！どーもです。
紛れもない自分の１７年前の体験なんですが、
客観的にこの文章を読んでみて・・・コワイですね(笑)。
ＪＲさんあたりに売り込みましょうか、
「安全運転キャンペーンに、中刷り広告、どないですか？」って。

そう、恥ずかしかったんですよ、ものすごく。
でもこれがわかるってのは桃さんは、まだお若いんですな～。
恥ずかしい事がなくなるってのが、オバサンというものです。
by midori (2005-11-20 08:52) 

俺様　nice！ありがとうございます。
それとも、ヨン様とお呼び申し上げたほうが よろしいかしら？
そちらにもお邪魔させていただきますわ。　
by midori (2006-01-27 08:56)